過去ログ ブログ版


2012年1月12日(木) 晴れくもり
代わりに京都
「daiさん、忍者屋敷は如何でしたか?」
 昼休み、声を密めて彼は聞くのだった。
「忍者屋敷・・・、実は言ってないんですよ」
 負けずに声のトーンを落とし、そう答えた。
 年始に金沢へ旅行に行くはずだった。今まであまり回った事のない北陸方面へ、車で出かけようかという話になっていた。しかし直前になってタイヤチェーンの不備が発覚し、北陸の旅は中止となった。
 計画段階で「金沢に行くのだが何処か良い所はないか」と聞いた所、彼が教えてくれたのが忍者屋敷だった。
「金沢にはですねぇ・・・、忍者屋敷があるんですよ!」
 そっと秘密を打ち明けるように教えてくれた時の目の輝きと、行ってないと分かった瞬間の今の落差を見るにつけ、すみませんという気持ちと共に、彼への好意が湧き上がるのが止められない。
 いつか絶対行きます。


2012年1月9日(月) 晴れ
おめでたい人ら
 コケる坊さんの話しをして、ようやく我々は分かり合えた気がした。
 迷うのは美容院で何を話すかだった。引越し当初、通い始めた地元の美容院に入る時は緊張した。髪型などどうでもいい。美容師さんとの会話よ盛り上がれ。そんな気分だった。
 さすがにもうそんなことはない。だがそれでも、二ヶ月振り位で顔をあわせる時は、どう話題を切り出そうか迷ったりもする。
 本日は天気の話しから入った。まぁ順当だ。続いて時事ネタの成人式をまな板に乗せる。しかしまだ、何となくしっくり来ない。
 「そういえば、坊さんコケましたよね」何とはなしにそう口にした瞬間、びびっと来た気がした。気持ちがやっと通じたなという感触だ。新年の一発目の鐘を突くテレビ中継で、坊さんがコケていた。その話しだ。案の定、美容師さんの鋏捌きも熱を帯び始める。
 坊主もこけ、鋏も熱く、本年もよろしくお願い致します。

2012年1月10日(火) 晴れ
呑気
 沢庵について書こうとしていた。
 冬の晴れた日、空気もキンと冷えたお昼に、近所のスーパーで沢庵の細巻きを買った。一本七十五円だった。暖房の効いた部屋に戻って、その細巻きをぽりぽり齧りながら、窓から空を見る。晴れ渡った空に、申し訳程度に雲が浮かぶ。口の中からは滋味が溢れ、歯を立てればあの食感だ。お茶でも啜って、このまま寝てしまいたくなる。そんな沢庵賛歌を書きたかった。
 だが、今これを書いているファーストフード店で隣の席に座っている男子高校生達が、そんな甘えを許さない。
 男子高校生達は性欲全開だった。自分達の思う女性との触れ合いについて、熱く熱く語っている。そんな情念のこもった言霊を聞いて、呑気に沢庵の事など書けるわけがない。どう集中しても、沢庵と青空の隣に裸の女性が浮かんでいる絵しか、思い描けなくなる。
 そんな日もある。そんな日もあるんだ。




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