上目使いの世界
 松浦亜弥の上目使いにおじさん達は参っているらしいが(タ○ーレコードのポップに書いてありました)、上目使いについて、そんな甘い認識は根本的に間違っていると、私は言いたいのだった。
 日本画で以前から気になっていたことがあった。
 陶磁器の包装、緩衝材として使われた版画が海を越えて伝わり、西洋絵画に影響を与えたなどというのは有名な話しだが、私が気になっていたのはそれより少し前、中世時代の日本画だった。全くの門外漢で詳しい事は分からないのだが、おそらく平安末期から室町前期にかけての絵画、「犬追物」などと教科書に出てくるような絵画だ。何故か。
 上目使いの人物の多さ。
 私を惹きつけてやまないのは、この点なのだった。
 一体、私はこれをどう解釈すればいいのだろうか。
 中世の絵画には、上目使いの人物が多い。いや、数がそれ程あるわけではないのだろうが、現代の絵画と比べて比率が明かに多いと思う。私の印象の中ではもう、ほとんどの中世絵画が上目使いである。
 武士の絵ならば、まだいい。戦の異様さを強調するため、あえて上目使いに描く。そのような技法があったとしてもおかしくはないだろう。
 最近私が見たのは、坊主だった。
 「坊主の肖像画、上目使い」それはどうだろうか。武士のように、何かの異様さを強調するために、あえて上目使いに描かれている。仮にそう解釈してみよう。
 異様な祈祷で上目使いな坊主。
 そこで強調される「異様さ」とは、武士の時とはまた別種の「異様さ」なのだった。
 他にも上目使いで印象深いのは、雷神風神のニ神が有名だ。
 一体、中世とはどんな時代だったのか、私は俄かに、それまで歴史に対して漠然と描いていたイメージの変更を余儀なくされるのだった。戦で敵を威嚇するために上を向き、一年の幸福を祈る祈祷で上を向く。果ては犬を追いまわしながらの上目使い。我々の祖先は一体何をやっていたのだろうか。
 先日テレビ番組で、チュニジアを紹介していた。チュニジアはアフリカ大陸北端、地中海に面した国だが、ローマ時代よりモザイク画が盛んであったらしい。「これがチュニジアで最高と言われているモザイク画です。ローマ時代のものだと言われています」リポーターが、一枚のモザイク画を紹介する。聖女のモザイク画、上目使い。
 こうして世界は、過去から馬鹿になっていく。

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